0312
「メダリスト」読み始めた。なるほど良いなと思った。
僕の人生にこんな「渇望」が登場したことなどついぞなかったなという気分を久々に思い出した。親の言うとおりに勉強をしたり、人生のレールがよくわからんことになるのが怖くて勉強をしたりして、そうしているうちに自分は空虚だなあと思ったり、そんな気分を日記に書いたこともあったような気がする(ここにはない、しかし別の場所にはある、ずっと昔の日記だ)。自分には何もない、肉や骨や心臓ではなく紫色のボンヤリした光が空虚な身体の内側をただ照らしているだけなのに、それでも身体は動き、頭は働き、どうにか大学を出て、そして立ち尽くし、膝をつき、雨が降り、いっそこのまま朽ち果ててしまえばいいのにと願い、そしていつまでもそうはならなかった。