1226'
今日はすこしだけ元気。
部屋の段ボールを棄てられたからかもしれません。小さい達成感とその視覚的影響(の影響)は無視できないものがあると思います。
午後から研究室へ。セミナがあって、なんでこの集まりにこのひとが、という感じのものだったのだけど(ほんとうに偶然そう決まったらしい)、平衡統計力学の基礎となる要請の話で、とてもスリリングだった(僕はいま「とても興味深かった」と書こうとしたのだけど、それは僕がいつもまったく興味のないことについて感想を書かされるときに余白を埋めるのに使う言葉だったから僕はそれを使いたくなかった、この説明、必要か?)。エルゴード仮設は特に必要ないしそもそも正当化できない、というのが最近の流れだ、というのはなんとなく聞いたことがあったけど、等重率の原理もより本質的な仮定に置き換えられるというし、ボルツマンの公式を用いない定式化ができる、というのが先生の最近の仕事らしかった。聴衆は僕も含めてそれほど専門的な知識を持っているわけではなくて、だから幾分端折って話していたから、いくつかの議論はよくわからなかったし、スライドが移り変わってゆくあいだに定義を忘れてしまったりしたけれど、けっこう理解はできた(と思う)。
要請のこと。等重率の原理のかわりに、「ほとんどすべての状態は平衡状態である」という要請を置く。これが具体的にどのように置き換えられるのだったかはちょっと思い出せないし僕がよくわかっていないと思う。メモみたら書いてあるかも(証明は端折られていたが)。
それから統計力学の新しい定式化。系のエネルギーEが与えられたとき、その系の力学的量の値は、エネルギーEの固有状態すべてのランダムな重ね合わせ(Thermal Pure Quantum stateと言っていた?)を調べればいい、らしい。で、それは知られていたことだけど、それだけではエントロピーのような熱力学的量は出てこないし(状態を一つだけ眺めているのだもの)、そのような混合状態を構成するのも非常に困難だった。(1229追記:TPQ状態は混合状態ではない、との指摘をもらったので修正。密度行列で書いてたので混合状態だと思ってしまってた)
しかし、全固有状態のランダムな重ね合わせ状態から出発して、ある操作(ここは聞き逃したか端折られたかでよくわからない)を適切な回数繰り返せば、先に述べたようなTPQ状態によく似た状態を作ることができて(このとき系のエネルギーは∞から減ってくる、らしい?)、それを使えば力学的量が求められる、という。さらに、このようにして作ったTPQ状態は、エネルギーについてδ関数に近づくのだけれども実は違っていて、その頂点の丸みのぶんだけマクロな量、熱力学的量に関する状態を含んでいる、みたいな話だったと思う。とにかくこうしてエントロピーも温度も求められる。しかもここでは行列の乗算しか使っていない。対角化も逆行列も使っていない。実際にこれで計算したところ、反強磁性XY格子の厳密解とはかなりの精度で一致したらしい。有限温度で使える(絶対零度でなくても使える)というのも大きなメリットだそうだ(でも、任意の温度で使えるというわけではないのかな、と思う。操作の繰り返しによっていろいろな温度(に対応するエネルギー)をとりますよ、というだけ?)。
というめも。いやあ、きちんとすごさを理解できているかは怪しいけれど、興奮しました。大数の法則、ちょっと好きだし。
で、夜はセミナの懇親会があって、師匠と学会発表のことを相談して、一応方針が決まったので打ち合わせ資料を作成。予稿はこれから書きますけど、まあそんなに細かくは見られないだろう、とのこと(まだどうにでもなるし)。しかし、やっぱり僕にはあまり評価に値する成果であるとは思えなくて、少なくとも僕の(というよりもボスが僕にやらせたがっている)モチベイションから必要とされる性能には遠く及んでいないわけです。まあそれでも、発表しておくことは悪いことではない、のかな。なんだか後ろめたいなと思うのですけど。
まあ今夜はもうすこしがんばります。明日は昼からだしね。
やはり元気になって、すこしだけでも魅力的な人物であろう、と思いました。そんな気力がどのくらい残っているのかわかりません、これもたぶん不安定に乱高下する気分の一つのピークにすぎないのでしょう。だからせめてここに記録しておこうと思います。