0821
嫌なら見るな。
僕は大多数の人間よりもつらい毎日を過ごしている。
そんなことはない、という主張を僕は信じない。
だけど僕にはこれを認めさせる方法があまりない。せいぜいが死んでみせるしかない。そうしてやっと、ああこいつはどうやら普通ではない状況にあったらしいぞ、と認めさせることができる。そうしてやっと、僕がどれほど本気で日常の改善を望んでいたか、僕の馬鹿げたクズ人間賛歌を装った主張がどれほど心の底から望まれたものであったか、それをようやく知るであろう。
でも、それでは足らない。そんなもの、結局のところ取るに足らないことだ。一度その断面を見せつけられた人間だって、結局その大半は、僕をかわいそうなイレギュラに、例外的な失敗作に、決めつけて、丸め込んで、忘れてゆくだろう。あいつは例外。あいつは普通じゃなかったから。かわいそうに。
でも、そうじゃない。多数派ではない、けれども異常でも例外でもない程度の人間が存在して、同じ程度に苦しんでいると僕は思う。僕の死がそんな風に例外として処理されてしまうことは、カウントダウンの数字を一つ進めることにしかならない。
どうでもいい。
生きているだけで価値のある人間の存在なんてだれも信じてはいない。私には価値がないから死にますと言えば、そんなことはない生きていることには価値があるのだと説く。けれどもそんなら生きますと言えば、価値を生産しろと五月蠅い。みんな我慢しているんだ、お前だけ甘えさせてなんかおくものか。
だったら人間なんてみなやめてしまえばいい。
絶え間ない努力の対価としてしか幸福を得られないのなら、僕にとってそんなものは幸福でもなんでもない。それなら僕に幸福はない。それなら、どうして僕は生きなくてはいけないのか。
僕は僕を人質に社会と戦うには社会に対して価値がなさ過ぎる。
他人に迷惑を掛けずに死ぬ方法がないのはかなしい。
しかし社会だとかが人間を幸福にする必要なんてもともとないのだから、仕方が無い。僕が不幸だなんとかしろと声を上げたところで、僕は僕を人質に社会と戦うには価値がなさ過ぎる。
社会に背を向けるもっとも安定した手段は大金を得ることなのだろう。
もしも僕が僕を人質に社会と戦えるようになったら。僕は戦うだろうか。
一定量の血と汗と涙が流されていなければ価値を見出せないような人間のためにこの身体を差し出すのは嫌だ。
我慢競争によって見かけ上の成長を捏造するのは間違っている。競争というシステムが最適解を用意しているわけではない。
「お母さんは楽して生きてもらうためにあなたを賢く育てたんじゃないのよ」。
僕はなぜ生きているのか。
死にたい。隠れたい。失われたい。逃げたい。退場したい。
僕が幸福になれる可能性が寸毫ほども残されていないこの社会という場所から脱出したい。逃亡したい。失踪したい。
いまなら心から言える。すこしくらい貧しくてもいい、本が買えない月があったっていいし、一日一食の月があってもいい。ただ、苦労のない生活がしたい。僕の余裕のある部分だけを差し出して、それだけでうまく回ってゆけたらいい。僕はもう、自分を磨り減らせるのなんてまっぴら御免だ。
ここにこんなものを書いたって、誰も理解してはくれない。残念ながら僕は当分は死ねないだろう(怖いから。それに、まだ僕はなんだかんだいって学生だし、楽しいときだってある。これは本当だ。だからどうかまだ心配しないでほしい)。だからこれを読む人間だって多くはないし、読んで本気にする人間も多くはないし、僕を長期的に助けてくれる人など絶無だ(そんなことされてもびっくりするばかりである)。
でも、これは僕の遺書の一部として、ここに置いておく。もし僕が死ぬことがあったら、これが僕の遺書だ。死ぬまで願っていたことだ。生きるのをやめた理由だ。
すぐに忘れられるとしても。
あ、前半部分のことはどうか気にしないでください。
朝から研究所へ。師匠と光学系のセッティングなど。とはいってもケーブルを探して奔走していたばかりでしたが。あ、でもレンズ一個つけました。あれでいいのか心配。光学機器の扱い方も憶えてゆかねばなりませんね。
あと準ボスにパソコンの相談したら買ってもいいと言われたのでちょっと探してみます。計算屋さんなんだから、そりゃねえ、って言われました。前に言ってた構造のシミュレイションとりあえず設計はできた、と言ったらびっくりされたし。ちょっと調子がいいです。ごきげん猫。
夕方からバイト。ひさびさ。オフィスが移転したと聞いていたのですがびっくりしました。広いです。入り口からデスクが遠いです。自販機とかあるし。なんかでも、ホワイトボードが遠くになってしまって寂しいです。頼んで壁に掛けてもらおうかな。デスクの横にないと議論しづらい。
明日は昼からドライ・エッチング。原理について簡単に予習するように、と師匠に言われたので調べていますがもう疲れてしまってあんまり文字が読めません。さっさとねむろう。